船のカタチ(36)  ノルウエイの船  Golar/Kawasakiのタンカー
              PATRICIA級、 JEANNE MARIE級、 GOLAR NOR級、 GOLAR NICHU級、
              GOLAR PATRICIA、 GOLAR SPIRIT (LNGタンカー)

                                                                   2012-12 神田 修治


Gotaas Larsen社はノルウエイ出自の船社、後に社名を縮めてGolar社となりました。
Golar社は長年にわたり多数のタンカーを川崎重工業に発注・建造したがそれらを上図に示します。
その第一船はPATRICIAで、進水に際して船主から褒賞金が出ました。 それを記念して川崎も資金を足し、労組とも相談してホールや会議室を備えた会館が建てられました。 それがパトリシア会館で(1)、いまもKシニアの行事等にも使われています。 またGOLAR NICHUの NICHUとは「二十」のことで、Golar社が川崎へ発注した20隻目の船という意味で、多数の船がGolarから川崎へ発注されたことを記念して命名されたものです。

上図から、当時のタンカーの大型化と、カタチの変遷(アフトエンジン・アフトブリッジへ)がよくわかります。
船主と造船所の組合せが同一なので変化にも一貫したものが見てとれます。船のカタチは特異なところはなく、普通でオーソドックスですが良いカタチといえます。 GOLAR NICHU級とGOLAR PATRICIAではプロペラにダクトを装備して推進性能の向上をはかったが、それについてはKシニア会員の岡本洋博士が各誌に発表されました(2)。 主機は川崎式蒸気タービンです。 LNG船出現の初期、川崎はGolar社の発注により日本で最初のLNG船を建造したが、それが上図のGOLAR SPIRITです。 本船はMoss式でこれもノルウエイと縁が深い。

このような船主と造船所の善良な関係は、相互の信頼関係によって成立すると思うが、市場競争厳しい中でこのように多数、永年続いたのはスゴイことと私は思います。 その後Golar社はLNG船に特化しました。 その船隊中にはGOLAR SPIRITも健在だが、最近の新造船の多くは、韓国建造のメンブレン式LNG船のようです。

  (1) 川崎重工業㈱社史(1959) p155、p738、
  (2) 例えば、大型タンカーにおけるダクトプロペラ装備例(岡本他)、関西造船協会誌N153(1974)



船のカタチ(36a)   右舷真横から見た図    ノルウエイの船  Golar/Kawasakiのタンカー
                                                                   2012-12 神田 修治


私のスキャナーはA4版で、船のカタチ(36)では40万トンULCCも入れるために各船の図は小さくなりました。
そこでこの図は(36)を2分割して作図し、スキャナーにかけたもので、そのうち本図(36a)は右舷真横から見た図です。
ついでに作図について記すと、真横の図は一般配置図(GA)をもとに作図します。 だからGAの調査・収集が大切で、古今・内外の雑誌等を調べるため深江の神大海事科学部の図書館へよく行きます。 また近年はRINA(英国船舶工学会)が毎年竣工した主要船舶のGA を掲載した年鑑Significant Ships を発行しており有難く、さすがRINAと思います。 彩色はカラー写真や絵葉書等を調べます。近年のインターネットの発達は著しく、世界の船好きがアップロードした写真、絵画を検索し、参考にします。

船のカタチ(36b)   船首45度右舷から見た図    
ノルウエイの船  Golar/Kawasakiのタンカー
           
                                                      2012-12 神田 修治


これは船のカタチ(36a)の各船を船首45度右舷から見た図です。ただし距離は無限遠です。
このような図ではハウスの前面も見えて船のカタチがよく表現でき、また並べて比較するのに、見る条件が同じで都合がよい。
一般の図や写真では遠近があり、見る距離によりカタチが変わるのに対し、この図では統一できるので、ひとつの標準化といえると思います。 このような図は一般配置図(GA)から機械的に作図できます。 すなわちGAから、長さ、幅方向にはcos45°(約0.7)倍、深さ(高さ)方向には1.0倍の寸法で作図すればよい。 ところで、遠近法による作図も大切と私は思います。 将来条件を統一した遠近法も考えてみたいと思っています。またそれを逆に考えれば、遠近のある写真から三面図(投影図)を作図する方法ができると思う。 これができれば模型つくりの人びとに裨益すると思います。  すでにそのような簡便なソフトがあるかもしれません。


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