2010/02/15 文責 小林幹弘、城野隆史
1. 日時 : 2010年2月5(金) 14:00~18:00
2. 会場 : 川重パトリシア会館
3. 参加者 : 21名 (敬称略)
赤木新介、 太田紀一、 木村文興、 瀬川治朗、 杉山和雄、 谷田光弥、 津垣昌一郎、 外山 嵩、
豊田 繁、 長野 健、 野澤和男、 濵田 淑、 塙 友雄、 藤村 洋、 矢木常之、 山中直樹、 渡辺俊夫、
岡本 洋、 藤田 実、 城野隆史、 小林幹弘
~ 冒頭、去る1月6日急逝された 南波壯八氏の冥福を祈り 参会者全員で黙祷を捧げた ~
Kシニア会長をはじめとして多くの貢献を果たされた故南波壯八氏(淨船院釋壯願居士)に深謝し、
衷心よりご冥福を祈る
4. スピーチ
演題 : |
造船資料の保存活動の概要 ・・・・ 藤村 洋さん |
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(1)保存活動の経過
(2)保存活動のこれから
(3)旧木江工業高校の資料調査を通じて判ったこと |
配布資料 : |
(1)造船資料保存活動のフローチャート
(2)提供された文献のリスト (「社史」 「事業所史」 「思い出の記」 など) |
要旨 : |
(1)保存活動の経過と現状
*2007年春 散逸しつつある造船資料の保存の必要性の話題が出て、
夏ごろより具体的な課題となり同年10月正式に発足
*同年12月より各方面にアナウンスして情報入手に着手。
2年半の活動により保存資料も充実しつつある。
*資料の確保と併行して運営方針や規則・整理の方法などを取り決め、
貴重な資料の保管・収集を的確にする方向を定める。
*現物収集作業を進め、整理・分析・収納を行う中で、神戸大学海事科学部の
強力なご支援により作業スペースはもちろん保管場所の提供を受け、さらに
展示スペースの提供を得て、2009年7月 初めての展示を実施、活動が加速、
反響を呼び新たな寄贈に結びついている。
*一方web上で「デジタル造船資料館」として公開(2009年8月) 。
資料の所在や属性などの情報を順次デタル処理してきた。
将来は英語に翻訳などして Digital Shipbuilding Museum; Archives of Japan
として全世界への発信に結びつけたい。
英語への翻訳はKシニアの翻訳グル―プ(間野先生)のお力が借りられると
ありがたいが・・・。
*保存活動に当たって船の科学館、ユニーバーサル造船舞鶴館、函館ドック、
アムテック相生、呉やまとミュージアムなどを調査。
*支部内各社から資料提供をうけるとともに会員各位の提供があり、
大口提供としては大崎海星高校 ・ 東大船舶工学科 ・ 淡路某造船所など
*2年3カ月の先進導抗的役割を達成できた。
デジタル資料館は国立図書館関係者の目に触れ、博物館内の検索サイトに
登録された。
*見学場所の紹介
+ユニバーサル造船舞鶴館―藤村・南波・城野・杉山各氏
旧海軍工廠跡として貴重な資料を保有
+函館ドック―現在名村造船の傘下にあるので杉山氏の尽力で見学
貴重な古い道具があるが、まだ利用中のものもある
+横浜みなと博物館
展示の方法に興味あり
+アムテック相生
旧播磨造船の資料館~長野さんのご厚意で南波氏が見学
+国内としては他にも 神戸海洋博物館や呉やまとミュージアムなど
+国外としては藤村氏が個人で英国のグリニッチにある海事博物館~
National Maritime Museum, 仏国の海事博物館を見学され その概要を
比較対比して考察を加えられて紹介
(2)今後の活動
*今までに得られた先進導抗を太くすると共に整理体系を確立して
資料を中心としてシンポジュームや研究会などにつなげる
*「デジタル造船資料館」を拡充し 海外への発信を図る
*資料提供をさらに広く呼び掛ける
(3)収集活動を通じて得られた木江工高のあゆみと造船技術者教育の今昔
*造船科を廃科した広島県大崎上島にある大崎海星高校(旧木江工高)から
多数の造船関係の旧資料を大量に譲りうけ、この整理と調査を通じて得られた
造船技術者教育の推移をきわめて的確に分析、解説された。
*造船のみならず工学系の教育システムの考え方の推移が良く理解できる。
技術を支える各層の技術者教育が初期の設立目的を出発点として、それぞれ
上方志向をもち総大学化して行く様子の一端が窺える。
*学校の最盛期における教育の中心が地域社会に根付く木造船技術にあったにも
関わらず多くの卒業生たちは大手造船所や海軍工廠などに就職し鋼船の建造に
携わっている。
*学校関係者に最近の造船業の復権の中
[造船科をもう一度復活する考えはないか?] の質問に対する答えが
「もうこりごりです!」 の意味するものはなんだろうか! などの説明があった。
~これらの活動の随所に故南波氏が深く関わり
積極的に活動していた姿が偲ばれた~
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4-1 関連スピーチ ~ 海事博物館のことなど ・・・ 岡本 洋さん
*木江工高の造船技術者教育の推移についても示唆を受けることは多いが、海事博物館に
関することの追加意見が披歴された。
*英国・仏国の海事博物館の状況 藤村さんの紹介通りでありそれに対する比較考察は
的確な指摘であると思う。
*中国・韓国・デンマーク・アブダビなどで新しい海事博物館建設の動きがある。
英国でも2012年のオリンピック開催に向けて海事博物館のVersion up の動きがある。
*世界的にはICMM=International Congress of Maritime Museum が構成されており
日本からは「船の科学館」が参加している。
*ただ単に実物を羅列するだけの博物館ではだめではないか?
造船技術に関わった形での海事博物館が望まれる。 世界に冠たる造船技術を誇った
日本としてはそういった意味で世界に誇れる海事博物館がほしいものだ。
4-2 関連スピーチ ~ 海事博物館のこと ・・・ 山中 直樹さん
*神戸海洋博物館の設立に関わった経験からコンセプトがしっかりしていないとだめと言える。
用具などをただ羅列するだけでは意味がない。
それに依って何が出来たか,どんな理由で使われなくなったのか、次に何が出たのかなど、
時間軸とその技術によるアウトプットのマトリックスを含んだ展示が必要。
県庁のそばの竹中工務店の大工道具展なるもがある。 技術のUp-stream との関わりが
克明に表示されていて感銘を受ける。 それには技術の歴史観が不可欠。
歴史と技術の綾を色んな切り口で整理して展示するようにすることが望まれる。
5. 討議 (順不同)
*海友フォーラムで 古い円筒計算尺や 手回し計算機や 線図を描くウエイトとかバッテンといった
古い用具類が過去の話となるだけでなく 忘れ去られようとする危機感に端を発し
収集・保存すべしとの意向がまとまって開始された活動であるが、委員長のリーダーシップのもと、
故南波氏を筆頭とするメンバーの活発な作業の結果資料の収集が順調に進み デジタル資料館と
してホームページを立ち上げるに至ったことは称賛に値すると言うのがまずは会全体の認識。
*その観点をベースにさらにその保存活動を充実させるとともに、造船技術資料の保存・展示と言う
点で考慮すべき点について議論が交わされた。
*国立図書館の検索リンクに登録されたと言うことも今後の発展に希望が持てる動きと言える。
*多くの海事博物館は「物」をただ陳列し その大きさ・多さを競う傾向にあるがそれだけで魅力は
あるのだろうか? それにさらなるプラスたとえば技術的な視野での考察を付加するとか
技術歴史的な観点での取りまとめなどを加えて一味もふた味も加えていくことが望まれるのでは
ないかとの意見もでた。
*現在は収集・貯蔵が中心としても一歩進んだ考察・切り口で資料の取りまとめに進んで行けば
さらに良いものになるだろう。 その観点で言えば、すでにデジタル資料館の進め方にすでに
触れられている方向で進めることがまず第一ではなかろうか?との意見
*保存グループ発足の発端となった計算機一つをとっても、そのツールと技術の発展と言う形で
とらえることもできるし 例えば速力計測技術についてもマイルポストからマースメックさらにGPS
といった 発展の技術との対比での資料の収集・保存あるいは展示といったことも考えられる。
*世界の造船をリードした一時代を画した日本の造船業としてはその種の博物館があってしかるべき
だと言うのが古き良き時代をリードしてきた多くの造船技術者の共通認識と言えるが、
現在の関係者にその認識や実施する時間的・費用的に余裕あるかは疑問。
*その観点から、今Kシニアを中心に進めている過去の造船関係の資料の足跡を確実に残そうとする
保存委員会に期待する所大であり、将来それに対する技術との対比の考察を加えて残していく作業
は、今後の活動として重要なことと言える。
*博物館は実物を見せることに価値があるとの意見があり、実物を保存して見せるような所が良くない
と一概に見下すこともないのではなかろうか。
特に、いわゆる素人にはそういった形で興味をもたせるのも重要な役割であろう。
その上で より学術的視点や技術的切り口からアピールして その道の玄人を中心に技術的興味を
持つ人々をも引きつけるように技術の変遷を加味した資料保存に結びつけることが大事ではないか
*現在のデジタル資料館の目指す方向は適切と思われる。
政府とか造船関係者の中央において技術資料の変遷・歴史を含めた保存とか、より優れた海事
博物館への動きが期待できないのであれば、デジタル資料館の今後の展開としては 全ての
造船資料の保存展示のみを目指すのでなく、全国各所に点在する資料館とか博物館のネットワーク
を構築して、貴重な造船資料の所蔵状況を明確にするなど、世界一を誇った造船技術の粋の成果
の存在を確かにしていくことが当面の狙い所ではないか。
現在のデジタル資料館のリンク先に 「国内の海事関連博物館・資料館」 「海外の海事関連博物館
・資料館」 「海事関連の用具・器具の博物館・資料館」 が整備されているので、すでにその目的の
一部は達成済みともいえ、さらなる拡充・補充により完璧な博物館を具現すると言える。
多くの海事愛好者からのアプローチに伴う意見・提案を受け一層のVersion up を期待したい。
他にも多数の有益な意見が交わされた。
学会の12条委員会でもある現在の活躍が継続されることを祈る。
なお、最後に藤村委員長より貴重な会員各位の意見に対し謝辞が述べられ、併せて提出資料(2)を
参考に、さらなる提供の呼び掛けが行われた。
海友フォーラのムメーリングリストにこのリストを示して、呼びかけてはどうだろうかとい意見があった。
また 締めくくりの形で 長野健氏より 故南波氏が相生アムテックの資料館見学に至った経緯と
その際の様子が哀悼の意を込めて紹介された。
6. 次回予定
4月23日(金) スピーチ : 環境問題について (津垣、須藤)
以上 |
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