日本船舶海洋工学会 関西支部 海友フォーラム K シ ニ ア
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CO2削減と地球温暖化 PART Ⅰ 「地球温暖化について」

第10回海友フォーラム懇談会(2010,4,23 神戸パトリシア会館)にて発表
平成22年8月31日  須藤 邦彦

 このたび海友フォーラムからのご要請を受けて首題の「地球温暖化について」を話す機会を頂きました。 企業での環境管理業務と退職後の市民活動としての温暖化防止の普及啓発活動を通して、培った知見・取りまとめた資料を基にパワーポイントでその一端をご紹介させていただきました。
 その概要をここにご紹介します。

 パワーポイントをpdf形式に変換したもの(2.5MB)
     ↑ ここを右クリックして 「対象をファイルに保存」すればパソコンに取り込むことが出来ます。
     ↑ ここを左クリックすれば pdfファイルが表示されます。



1. 温暖化の現状と課題

 温暖化を論ずる前の予備知識として現在の環境問題について示したのが「現在の環境問題」であり、典型7公害・都市生活型環境問題・地球的規模の環境問題を示します。
 歴史的変遷を通して辿り着いた今日の地球的規模の環境問題発生要因として
    ①世界人口の増加(食料・エネルギー・資源・平和問題を惹起)、
    ②大量生産・大量消費・大量廃棄の社会経済システムが考えられる。

 21世紀に向けてこの課題への対応として1992年5月ブラジルでの地球サミットで「Sustainable Development (持続可能な開発)の概念の導入」が世界的に合意された。 換言すれば「経済成長と環境保護の両立」を図ることを意味する。 これを受けてわが国では環境問題に関する対応として環境基本法と環境基本計画で「持続可能な社会の構築」を目指すことになった。


2.地球温暖化について

 地球温暖化は「光は良く通すが赤外線(熱)の一部を吸収する」温室効果ガス(Greenhouse Gas)に依存しており、この結果地球表面平均温度は約15℃に保たれ生物が生存してきた。 地球温暖化が問題視されるのは、産業革命以降化石燃料の使用量増加に伴い大気中のCO2濃度が上昇し温暖化が進行していることである。

 2100年に向けての気温上昇を考えるに当り、予測の段階で多くの理論が出ており、現状分析ではIPCCの予測と自然変動を重視する予測とが顕著となっている。 平均気温2℃上昇した場合の危機説があり、CO2の削減対策が問われている。

   (注)CO2が特に問題とされるのは他の温室効果ガス (メタン、一酸化二窒素、各種フロンガス、
      6フッ化硫黄等)に比して圧倒的に量が多いためである。
      なお、水蒸気は最も温室効果をもたらしているが、人為的に大気中の水蒸気を制御することは
      困難なため削減対象としていない。


3.地球温暖化防止への対応

 ①世界の主要な動き;1992年「気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)」で「京都議定書」の合意が出来たが、数年後世界におけるCO2の総排出量が大幅に増加した。 原因はCOP3で数値約束をしていない非附属書Ⅰ国の中国、インド、ブラジル等発展途上国からの排出量の大幅な増加で、京都議定書の限界を認識することとなった。
 COP15(コペンハーゲン)合意では、削減目標に先進国・途上国間で認識に乖離があり、今年1月中に先進国は排出削減目標を、途上国は排出削減行動を登録することになった。 長期的な排出削減の指針として平均気温2℃上昇で安定化を目指すことで合意した。 今年11月のCOP16(メキシコ)で再協議予定である。

 ②日本の動き;日本の削減目標は2020年までに25%、2050年までに80%削減である。 平成22年2月時点でのわが国の政策動向は2010~2020年を対象として1990年比25%削減の方針に基づいた法整備を行い行程表が策定された。 現在未定。 (その後、地球温暖化対策基本法(現温対法一部改正含む)は閣議決定され、衆議院を通過したが、参議院での国会閉会のため廃案となっている。再度提出予定とのこと)

 ③2℃危機説;平均気温2℃上昇目標はIPCC第4次報告書温室効果ガス排出の将来シナリオ(安定化温室効果ガス濃度450ppm)に略合致している。 IPCC第4次報告書では非可逆的影響の代表例としてグリーンランド氷床融解について気温が1.9~4.6℃上昇しその状況が数千年維持されるなら、氷床は完全に融解し、世界の海面位は7m上昇するだろうと記載され、約2℃はグリーンランド融解防止の限界温度で、破滅的リスクの回避点であるといわれている。 この2℃達成というのはIPCC報告書の「政策決定者向け要約」に示すシナリオの中で最も厳しいものとなっており、極めて厳しい排出抑制が要請されることになる。

 ④温暖化防止対応への基本的考え方;「経済成長と環境保護の両立」を前提に対応を考える場合一定の経済成長率を達成するためにはCO2排出量削減率に見合うエネルギーシフト進展率(水力・原子力発電等、太陽光・風力・地熱発電の推進)及び省エネルギー進展率(企業・オフィス・家庭での省エネルギーの推進)を総合的に配慮する必要がある。


4.地球温暖化と海洋の関係 (IPCC第4次評価報告書より抜粋)

 ・海洋に関する現状分析と将来予測
   水温:水深3,000mまでの全海洋の平均水温は上昇している。
   塩分:中・高緯度において減少し、低緯度において上昇している。
   将来:①海洋生態系の変化、 ②水位の上昇  ③CO2吸い込み量の減少  ④深層循環の弱化
       などの影響が懸念される。
   水位:20世紀中に水位は全球平均で17cm上昇、
       過去50年間の平均上昇率は1.8mm/年、過去10年間の平均上昇率は3.1mm/年
   将来;今後100年間で18cm~64cm上昇するとのシナリオもあり。
   海洋の酸性化:海洋によるCO2取り込みのため、現在の海水は産業革命以前の海水よりも0.1pH
             低下(酸性化)
   将来;大気中のCO2濃度増加により海水の酸性化は進行し、21世紀中に0.14~0.35減少するとの
       予測あり。
       この影響は①海洋によるCO2取り込みの減少 ②酸性化が進むと炭酸カルシウム等の「殻」
       を持った生物(プランクトンや珊瑚)の生存が脅かされることになる
       ③魚などを含め海洋生態系が大きく変化する懸念がある

 ・海の役割
   ①大きな海の熱容量;温まり難く、冷め難い
   ②温室効果期待の取り込み;CO2吸収により地球温暖化を遅らせるが、吸収能力にも限度がある。
   ③生物の存在(多様な生物の宝庫);浅い層のCO2を海洋内部へ生物学的に急速に輸送し、
     大気中のCO2の吸収を促進する。生態系の破壊が懸念される。


5.私たちの取り組むべき具体的活動

 ・温室効果ガス排出の抑制
   ①ボトムアップ(私たち一人ひとりが努力すること)とトップダウン(社会の仕組みそのものを
     脱化石燃料依存社会とすること)  
   ②木材は再生可能な(循環可能な)エネルギー源;木材の燃焼によるCO2の放出は木材の
     生育により吸収される。伐採後は木を再生すること。 
   ③世界に目をむけ事実を知る;温暖化問題も加害者即ち被害者の特徴を有するとともに、
     南北問題であるとの見方がある。

 ・ライフスタイルを見直そう
   世界に約束した目標 (CO2排出量を1990年に比べ2008~2012までに6%削減
                  及び2020年までに25%削減)を守るためにライフスタイルを見直そう!
   日本には古から伝わる「環境の心」(環境を大切にし、敬う心)があります。
   「草木国土悉皆成仏」の考えを大切にして、「もったいない」(物の本体を失する)を忘れないように
   していきましょう。


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