日本船舶海洋工学会 関西支部 海友フォーラム K シ ニ ア
Kシニア の トップに戻る 海友フォーラム の トップに戻る 2017年 の トップに戻る


海友フォーラム 第33回懇談会 報告

文責 城野隆史

1. 日 時 : 2017年9月21日(木) 14:00~18:30
   会 場 : 川重 海友館新館

2. 参加者 : 23名   (順不同、敬称略) 
         井沢雄幸、大柴隆士、太田一紀、大山正俊、岡本 洋、荻野繁之、小野靖彦、加藤健二、
         河合敏夫、小寺元雄、佐野正、杉本健、城野隆史、津垣昌一郎、長野 健、並川俊一郎、
         野澤和男、濱田孝一、平田紘士、藤村 洋、前田俊夫、増本 敞、矢木常之、

3. 講 演


  1) 『潜水艦』 そして 『マイクロナノバブル事業の起業顛末』 ・・・・・ 佐野 正さん

 元川重の潜水艦設計部長。 退職後、NIRO(新産業創造研究機構)勤務、その後、「ひょうごTTO合同会社」を設立、マイクロナノバブル事業を興し奮闘中。

 高校生向けとして出版社からもちかけられ、著書「潜水艦メカニズム完全ガイド」を出版。
 (秀和システム 1,800 円)
 
 潜水艦の構造、推進方法、騒音対策、安全対策、艦内生活施設などをその変遷を含めた説明。複雑極まりない多数の機器や、それを限られた容積内に配置する詳細技術と同時に、艦全体を調和のとれた設計にまとめ上げる技術が肝要であるという。 このことは一般の船全体に言えることではあるが、潜水艦では特にそうだろうと納得した。
 現在、最新鋭の潜水艦は22隻を目標として増艦中。 内8隻はAIP(スターリングエンジン搭載により、従来のように吸気が必要なディーゼルエンジンを駆動しないので長期の潜行が可能)を搭載している。 日本の潜水艦は同型艦を10年で10隻建造する少量生産であるが、建造を支える企業は1,000社を超え、建造・メンテナンス・廃艦までの25年間の責任維持施工であり、国産化率100%。 高精度、高密度艤装、高度品質管理に基づく安全性の極めて高い艦船であるという。
 潜水艦の乗員は誰にでもできることではないので、一旦潜水艦に配属された乗員は、除隊するまで潜水艦暮らしだとのことである(船は変わる)。 将校は、海上船や陸上勤務に交代することはある。
 最近は、防衛省も変わってきて、差し支えない限り、公開して自衛隊の装備品の技術的優位性を広く国民に周知するよう努力している。 出版した本も海上自衛隊の査読を受けているが出版には協力的であったとのこと。



 「マイクロナノバブル」というのは、ただのマイクロバブルではない。 船の摩擦抵抗低減策としてバブルを利用するアイディアは古くから研究対象になっていて既知の事柄であるが、マイクロナノバブルというのは、それとは全く別物と考えた方がよく、バブルを発生させた水を、しばらく(数分から数時間)放置しておくと、目に見えるような泡は空中に放散してしまうが、目にも見えない細かなバブル (ナノバブル:100nm、マイクロバブル:10~70μm) は、泡の浮力とブラウン運動のつり合いで水中にいつまでも残留している。 そのようなバブルをマイクロナノバブルと呼ぶ。
 佐野さんのバブル発生装置は、気体を溶けやすくするため加圧した気体溶解器の中の水を旋回流方式のノズルから高速射出し、この時溶け込んでいた気体がバブルになる。 この水には、洗浄、水質浄化、鮮度維持、成長促進、殺菌などの効果がある。 その水を使って魚を水槽に生かせば鮮度を長く保てるとか、イチゴの栽培に効果があるとかが実証されている。 それを佐野さんは、ビジネスにしようとしているのだが、いくら説明し、実施して見せても、いざとなると買ってくれないのが実情であるらしい。
 これを事業化するための課題として;
   ◆ 効果のメカニズムが解明されていない (従って信用されない)、
   ◆ マイクロナノバブルのサイズや個数の計測技術が未成熟である、
   ◆ 世の中に偽物や特許・用語が氾濫している、 
 と言うことだとの指摘があった。

 どのようなビジネスモデルを構築するべきなのか、日々がサプライズの連続であるという。 市場からの信頼を得るためにも、ぶれないポリシーと朝令暮改で起業の難しさを乗り切ろうとされている。 聴衆からも佐野さんの話に 関心が高く多くの質問があった。
 此処では割愛するが、ひょうごTTOに行けば装置の見学も可能である。 佐野さんの今後の健闘を祈りたい。

   
 次回 : 島本幸次郎さんの 「フィンランドの核廃棄物処理施設に関連しての原子力」。
                           日本の現状と比較して語っていただく予定です。
                           来年1月中旬から2月中旬に開催予定。

                                                        以上