船のカタチ (5)   MAURETANIA、 QM1、 QE1 - CUNARD社 1930年代の船   2010-05 神田 修治

  今回からは CUNARD社船です。 船のカタチ(1)の MAURETANIA と並べてQM、QE、計3船を示します。
 1930年代は CUNARD社にとっても大変で大切な時代でした。 世界一のオーシャンライナーQMを建造したが、
 世界恐慌のあおりで一時建造が中断されました。

  QMの竣工に続いて姉妹船のQEが建造され、さらに中型の MAURETANIA が建造されました。 QMの出航を
 対岸から多数の市民が見送っている古い写真を見たことがあるが、それほどQMは世界一のオーシャンライナー
 として人々の憧れと期待を担っていたのだ、と私は思います。

  これら3船のカタチはよく似ており系譜をなしていると思います。 SSR誌のQM紹介記事では good normal form と
 記していますが、私もオーシャンライナーの典型的な良いカタチだと思います。 これらのカタチを見て気がつくこと
 は、ハウスの前面は急な階段状、ハウスの後部はなだらかな階段状、だと思います。

  階段状の場所は散歩や日光浴を楽しむ場所になっていますが、このように機能を果たすことと同時に良いカタチに
 なっていることに感心します。 ハウスの上には2本または3本のオレンジ色の煙突が堂々と並んでいます。 これら
 の煙突の間隔と傾斜が絶妙で、巨大さと高速を強く感じます。

  私はロングビーチでQM保存船を見物し、ショップで図面を買ったが、それにはマストと煙突の傾斜がフォアマスト
 では RAKE:1
13/16 in/ft等と記されており、それが第1煙突では 17/8、第2煙突では 115/16等と、うしろへ行くほど
 傾斜が大となっていることに興味を覚えました。

  QM、 QE は人々の期待を担って関係者の精一杯の努力、がカタチにも表われていると私は感じます。 一方
 MAURETANIA は同様のカタチだが2本煙突の間隔がややせまく、コンパクトに、ひきしまった印象を受けます。
 M船は中型船で、QMのような世界一というプレッシャーはなく、CUNARD のやりたいようにやったという感じが
 私にはします。 M船はQM、QE と違って、Thames を遡って London の Dock にも入港できたそうです。

  これら3船はみな、第2次世界大戦では動員され Troop Ship として活躍し、生き残りました。
 ところで こんにちの私たちには、QM、 QE のように広く人々の憧れと期待を担ったというものは、あるでしょうか。



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