船のカタチ(76)  海上保安庁 高速船艇
              あまみ <1992> 級、 はやぐも <1999> 級、 しんざん <1988> 級、
              らいざん <1994 > 級、 とから <2003> 級、 つるぎ <2001> 級、 ひだ <2006> 級、
              あそ <2005> 級、 はてるま <2008> 級
                                                                   2016-04 神田 修治
 ref.  特記の他 海上保安庁ハンドブック 海人社2001       図中、正横側面図、の他に、船首45°右舷から見た図も示す。


近年注目されている海上保安庁(海保)関連の事件として、北朝鮮による不審船・工作船や、中国による尖閣の日本領海への近接・侵犯があります。 これらに対応するため海保の船艇には高速の要求が強くなってきました。 不審船を捕捉したり侵犯船を追払ったりするため、優れた高速性能、運動性能によって相手船より優位な船位を占めて相手を制圧することが必要なのです。 そこで海保では1990年頃から、外洋で実用可能な高速船艇建造のための基盤技術として、 ①半滑走モノハル船型、 ②軽合金溶接船体構造、 ③高馬力エンジンとウォータージェットによる推進装置の実用化、等の研究開発を行い、それに基づき外洋型実用的高速船艇を設計・建造しました。[1]  その中から上に図示し、解説を下記します。

あまみ<1992>級・・・高速化する密漁船に対して建造され、半滑走船型、軽量化により25ノットを出した。 あまみは九州南西海域工作船事件で工作船から銃撃を受けた。 そしてそれは海保が高速巡視船の整備に拍車をかけた契機となった。
はやぐも<1999>級・・・新日韓漁業協定に対応、36ノット。 運用成績、現場評価は良好で、その後も量産が続いている。
しんざん<1988>級・・・外洋で運用可能な高速巡視船として建造された。 九州南西海域工作船事件では期待通り活躍。
らいざん<1994>級・・・好評なしんざん級の使用実績に基づいた改良・量産型の船である。
つるぎ<2001>級・・・領海警備重視の高速特殊警備船PS(小型巡視船)、高速40ノット超を発揮する。
とから<2003>級・・・中型巡視船PMだが、PSつるぎから発展したカタチかと私は思う。 ハウスの背が高く不恰好と思う。
あそ<2005>級、ひだ<2006>級・・・北朝鮮工作船事件を背景に整備された30ノット以上を発揮する大型巡視船PL。
はてるま<2008>級・・・量産型高速PLで、尖閣事案に対応するため石垣、沖縄、鹿児島管区に重点配備されている。

私はこれまで造船屋として、船舶の特性は「大量の貨物等を中程度の速力で効率よく運ぶこと」と認識し、大型の客船、貨物船、タンカーやコンテナ船等に注目してきました。 しかし今回このシリーズをやって、「まもり」とか「いくさ」のために、高速の船艇やその技術もまた重要であることに、今更ながら気がつきました。

なお以上等は、海保ファンである私個人の意見であり、海保の見解ではありません。 念のため申し添えます。

  [1]海保装備技術部船舶課計画係 「海保の船艇ができるまで」、世界の艦船628、2004-07


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