おわりに ユダヤ人の歴史を「ユダヤ民族歴史物語」と題して概説しました。今回も地球 環境に立脚した視点を包含し、客観的に書くようにしました。さきの「トルコ民 族物語」と併せれば、「ユーラシア大陸の歴史」になります。本文の古典時代は 「ロマン」もあり、書いていても楽しかったのですが、近代の記述になると、現 象が複雑で文の表現に苦労し、とうとう長文になり、かつ、読み辛くなってしま いました。記述の中に「西欧のエゴ」「米ソ対立」「冷戦終結」「石油ショック 」「湾岸戦争」「オイルマネー」「バブル崩壊」「経済不況」「イスラム原理主 義」「テロ」「インテイファーダ」等現代世界の生々しい国際社会用語が頻々と 出てきます。従って、本文の内容は単なる「民族物語」でなく、今後の社会問題 を考える上にも参考になると思います。歴史を色々な角度から判断すると、今後 の事象に対し、様々なヒントがえられると思います。活用下さい。さて、最後の 章「パレスチナ問題」についての感想を次ぎに述べ、本文を終わります。
感想1 「西欧民族のエゴ」「ユダヤ民族の賢さ」 「アラブ民族のだらしなさ」 (1)西欧民族のエゴ ポグロム、ホロコーストの大虐殺は、当時の「西欧帝国主義」、「民族主義」 高揚中の悪夢的な出来事であったとは云え、日本人には理解できない「エゴ」 である。「エゴ」と云うより「妬み、嫉み、虐め」を超えた「人身御供」であり 、数ある史実の中で最も忌まわしい「人類悪癖の反映」である。ユダヤ民族の歴 史を通じ、時代の古近を問わず、この悪癖は世界中総ての民族の内面に存在する ことが示唆される。従って将来、「再び起らない」とは断言できない沈痛な事象 である。 また第1次大戦中の英国の拙悪な外交、すなわち、 一方で「アラブ独 立を認め」、他方で「ユダヤのナショナルホーム建設を容認し」、最後に自国が 委任統治したと云う史実は、無茶苦茶にも程がある。相手国住民を人と思わぬ「 植民地思想」の奢りの現れであったろう。外敵から犯された経験を持たない日本 人は「心して国際外交に当たる可き」と云うことを再認識させられる。
(2)ユダヤ民族の賢さ 1) 19世紀末、ロシアでポグロムが発生したとき、 黒い長衣(カポテ)を着用し 、たユダヤ正教徒5000人がエルサレムに移住した。その頃から「嘆きの壁」 は ユダヤ人に占領されていたのであった。最重要地点のエルサレムに、 早くも橋頭堡を築いたことは「賢い行動」であった。
2) ポグロムが激しくなると、多数のユダヤ人が米国へ移住したが、 彼等は持 ち前の賢明さ、忍耐力、団結力を駆使して、「新世界(アメリカ大陸)」を開 拓し、大勢力を築いてしまった。その高能力に驚嘆するばかりである。しか も、「シオニスト組織」「シオニスト基金」を設け、米国政府を味方に取り 込み、アメリカを「シオニスト」の中心地としてしまった。19世紀には、既 に「シオンの丘」はアメリカ大陸に建設されていたのであった。彼等の「企 画力」と「実行力」に感嘆する。
3) 旧約聖書には、「ユダヤ教の始祖アブラハム」はヘブロンで、ヒッタイト 人から土地を買収したと記されている。 第1次大戦直後から、故知に倣って 、「シオニスト」達は、パレスチナの土地を買収し始めた。その場所を調べ ると、ハイファからテルアビブに至る海岸線、テルアビブからエルサレムに 至る道路両側、ハイファからガリラヤ湖に至る鉄道沿線部等であった。これ らはイスラエル建国に最必要の「点と線」である。これを資金力で獲得した のであった。1947 年の国連のパレスチナ分割決議案で57%の広さの領土を獲 得したが、これは米国を味方に付けた当然の結果であった。中東戦争におい ては、アメリカの武器援助を受け、戦争には本質的に強い民族であるから、 イスラエルの「独り勝ち」は当然の結果であると思われる。
(3) アラブ民族のだらしなさ アラブ産油諸国では、少数の金持が政治と経済を牛耳り、 一般大衆は貧困で ある。大1次大戦後、 「シオニスト」がパレスチナの土地購入を図った折、不売 の申合わせに拘わらず、金欲しさに先祖代々の土地を敵方に売却するパレスチナ 人が多数現れた。一致団結して国を守る意欲は全く存在しない、イスラエル側を 大きく利するものであった。第1-4次の中東戦争で、 アラブ側で犠牲者を多数出 したのは、エジプト、シリアであった。金持ちの産油国の君主は金は出すが自国 の血は流さなかった。これでは「口で唱えるアラブの大義」が通用しなかったの も当然である。また、PLO はゲリラ部隊として酷使されるだけ、アラブ諸国はパ レスチナ人を差別し、真の意味で助けようとはしなかった。とくに、イスラエル 占領地内に居住するパレスチナ人は惨めで、誰からも忘れ去られて返りみられな い。こんな状態ではイスラム原理主義、過激派組織が大衆の間に浸透するのは当 然であった。今後共、「アラブの民主化」がどのような形態で実現するか、全く 予測できない状態である。
感想2 「オイルショック」について想うこと 1973年の「オイルショツク」は未だに記憶に新しい。私達はこれを「成長の限 界説」およびアラブ諸国の「石油価格吊上げ手段」と解釈していた。ところが今 回は第4次中東戦争と時を合わせて仕組まれた「イスラエル孤立化作戦」、 すな わち、「石油資源を武器として国際社会への挑戦」と云う見方を採用した。西側 諸国は打撃を受け、この作戦は成功したが、その結果、アラブ産油国にオイルマ ネーが流入し、アラブ経済に「バブル」が発生した、やがて、これが崩壊したと き、アラブには個人所得格差の不均衡、経済悪化、社会不安現象が1980年頃から 一斉に起こり、インテイファーダ、イスラム原理主義過激派の「テロ」が横行す るようになった。つまり「経済性バブル」の怖さを味わったのであった。それよ り遅れること約15年、日本は「高度成長」、「バブル」、「不況」、「経済不安 」を現在経験している。日本では今になっていろいろ議論されるが、アラブの「 オイルマネー・バブル」の時は誰も深刻には取上げなかったのである。今、「IT 革命」が叫ばれているが、こうした企業革命、産業革命には「バブル」の落とし 穴が付き物であると云う教訓を忘れないことが必要である。それにしても、エル サレムが太古の昔、地球の裂け目上に建設され、世界の経済を担うアラブ大油田 は、第 2次大戦中は未だ存在せず、「パレスチナ問題」が起こった時機になって 初めて、続々と発見されたのである。 日本もこの大油田のお蔭で世界第2の経済 大国に成長したのであった。 「歴史を創作する神の思召し」であるかのような ドラマテイックな出来事であった。 石油の大量消費は「バブル」を呼ぶだけで なく。大気中 CO2の増加によって地球環境を危うくする。「経済性バブル」どこ ろの騒ぎでない。全世界がエゴを抑制して真剣になるべきである。これこそ21世 紀の課題である。それが実行に移される頃、アラブの「パレスチナ問題」も整合 されているでしょう。本文は頭書から地球環境との関わり合いを論じてきた。最 後に「アラブ大油田」と地球環境の関わりに触れたがこの辺りで、文章を終わる 。
以 上 |