日本船舶海洋工学会 関西支部 海友フォーラム K シ ニ ア
Kシニア の トップに戻る 海友フォーラム の トップに戻る 2008年 の トップに戻る


大連 船舶関連施設・工場見学記

 Kシニア 神田修治


 私は造船会社のOBとして、最近の日本造船界が韓国、中国から追い上げられている現状を、若干の心配もこめて見守っていたが、折しも日本技術士会の大連研修旅行が実施されると知り、早速団員参加の申し込みをした。 といっても、研修旅行の見学先の詳細等はよく知らぬまま、中国、大連の科学技術や産業の有様を実地に見聞できれば良いと思ったのである。

 2001年7月21日、大連に到着し、ホテルの部屋は大連湾に面した25階で、窓からは大連駅の向こうに大連港が見え、その端には大きな造船所が見えた。 オウ、ナカナカヤッテルナとは思ったが、後日、そこを見学することになるとは思わなかった。
ホテルの窓から大連港を望む、造船所が見える 大連市人民政府訪問 (7/21)
旅順口区人民政府訪問 答礼パーティ (7/23)

 7月23日は、大連理工大学の見学であった。 大連市西部、バスにて約30分で大学に着いた。 広大なキャンパスである。 校務委員長の林教授、副校長の肖教授および今回の研修旅行の実現に尽力された杜教授等の歓迎を受けた。 
 双方のメンバー紹介、林先生挨拶、吉武団長挨拶のあと大連理工大学の説明を受けた。 学生数 20,000 名、中国東北地方第一の大学である。 資料を見ると、 Naval Architecture すなわち船舶工学科が主要な地位を占めている。 日本では、海洋システム工学科等となり、船舶工学科の名称がなくなった現状と比べて多少うらやましい気もした。

 施設見学は、海洋工学実験水槽と船舶模型曳航実験水槽を見せてくれるというので、私は驚き、喜んだ。 海洋工学実験水槽は、縦横約50mの方形水槽、二辺には造波水槽が設けられており、運転して見せてくれた。

 つぎは船舶模型曳航実験水槽を見学した。 長さ100m、深さ4m、幅6m程度で、大学の水槽としては標準的なものであった。 だが、この水槽で大連地区で建造される船舶の設計資料等、実用に供している由であったが、精度を出すには100mでは不十分ではないかと思われた。

 日本には研究所、造船会社の施設で300〜400mの水槽がいくつもある。 担当者の説明は元気で、親切であった。 曳航台車に私達見学者を乗せて走らせてくれた。
大連理工大学訪問 (7/23) 船舶工学科、実験水槽

 7月24日は国営企業見学ということであったが、詳細を聞くと、ホテルの窓から見えた造船所の大連新船重工(DNS)を見学することになったという。 私はよろこび、勇躍バスに乗り込んだ。

 バスは30分ほど北方へ走りDNSに到着。 孫副総経理によるDNSの説明を受ける。 孫さんは開口一番、船舶専門の人はいるかと問われたので手を挙げたが、私一人ですこし淋しい。

 DNSは 1990 年、大連造船から大型船造修部門が分離独立した中国最大の造船所であるが、現在上海に国営の新造船所を建設中であり、完成するとそれが中国最大となる由である。

 中国造船は、日本、韓国に次いで第3位であるとの説明であった。 私は、日韓は逆かとも思ったが訪問団の日本を立ててくれたのであろうか。

 ビデオによる造船所の紹介があったが、タンカーやバルクキャリヤー等を建造し、デンマークやノルウェーの名門船社からも受注しており、技術力もしっかりしていることがうかがえた。 私の質問に応じて孫さんは中国の民営造船所は中小規模なので世界の造船能力の動向にはあまり影響がないだろう、ただし、日中、中韓の合弁による造船所建設が進んでおり、これらは大型の造船所で建造能力の著しい増大につながるだろうと言われた。

 私は日中合弁の南通造船(川崎重工とCOSCOの合弁)については知っていたが、中韓合弁については知らず、将来、日本造船の強力なライバルになるかも知れないと思った。

 現場見学は、急な決定であったためか、ヘルメット等の準備はなく、バスによる巡回で、あまり奥には行けなかった。 建造ドックでは30万tタンカーが建造中であり、ドイツのKRUPP製の900tゴライアスクレーンがそびえ立ったいた。

 セミサブ式やジャッキアップ式の海底石油掘削リグの造修が盛んに行われていた。 工場の人達が元気と自信に満ちており、この国の発展を牽引して行くのだという自負が感じられた。
大連理工大 曳航水槽 前日 通りがかりに写真を撮ったもの
大連新船重工見学 (7/24)

 今回の大連研修旅行は、大変有意義であった。 特に船舶部門の私にとって、大連理工大学の船舶工学実験施設とDNSの見学は大変参考になり、幸運であった。 また、大連や旅順の人民政府機関の荘重な会議室で、「歓迎日本技術士会訪問団」という看板や、蓋つきのカップのお茶、拍手の交歓等の、中国式の格調高い会議も印象深い経験であった。

 今回旅行の企画管理をされた事務局をはじめ、関係の皆さんのご尽力に深く感謝します。
大連新船重工
大連経済技術開発区の庁舎にて


「大連 2話」に戻る     「アカシアの大連」