日本船舶海洋工学会 関西支部 海友フォーラム K シ ニ ア
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「明治以降の内航帆船・機帆船の造船学的研究」
- 野本謙作先生が明らかにされたことと残されたこと -

2016年10月17日 海友フォ-ラム懇談会で講演 増山 豊

 
            「明治以降の内航帆船・機帆船の造船学的研究 (10ページ, pdf 2MB)


 1. 緒言
  明治から昭和にかけて国内の物流の多くは,弁才船から合いの子船へと変遷した内航帆船・機帆船
  によって担われた.これらの船は各地で建造されたが、設計資料などはほとんど残されていない.故
  野本謙作大阪大学名誉教授はライフワークとしてこれらの資料の収集と分析に取り組み,船舶原簿や
  船名録の精査を行うとともに,愛艇「春一番Ⅱ」で全国各地の港を訪れ古い造船所の聴き取り調査を
  行うなどしておられた.残念ながらその途上で亡くなられたが,野本先生が残された資料などから,
  これらの船がどのような船型でどのように建造されたかなど,それまでに明らかにされたことや,残
  された課題などについて説明する.なお本稿は,文献[1]をもとに再構成したものである.

 2. 既存の沿岸帆船研究と野本先生がやろうとしておられたこと
 3. 船舶原簿などを基にした沿岸帆船変遷の歴史
 4. 船体形状比較による「合いの子船」調査
 5. 全国への西洋形帆船の普及と機帆船への変化
 6. 「伸子帆」のルーツ調査
 7. 地方の造船所の資料調査と保存活動

 8. 終りに

  野本先生がライフワークとして取り組んでおられた,明治から昭和にかけての沿岸帆船に関する調
  査研究について述べてきた.膨大な資料と,これらをもとに作成されたExcel 表などを見ていくと,
  野本先生の沿岸帆船に対する愛着を強く感じることができる.特に我が国独特の発展を遂げた「合
  いの子船」が,どんな船で何処でどのように建造されたのか明らかにしたいという問いに収斂されてい
  くような気がする.これらの資料は,現在大阪大学大学院工学研究科船舶設計学領域の実験室内に
  保存されている.野本先生と同じ興味を持ってこの問いに取り組んでみたいという方には,同研究科の
  梅田直哉教授 ( e-mai l :) に連絡の上, ぜひとも閲覧いただきたいと
  願っている.

              参考文献
 [1] 増山豊,梅田直哉:野本謙作先生の「我が国の沿岸帆船研究」について,日本船舶海洋工学会,
   平成27 年度春季講演会(シニアセッション),2015.
 [2] 石井謙治:図説和船史話,至誠堂,1983.
 [3] 笹木弘他:機帆船海運の研究,多賀出版,1984.
 [4] 野本謙作:船の世界史概説,講義資料,1999.
 [5] 野本謙作:伸子帆の起源と普及について,海事史研究,第62 号,2005,pp.92-98.
 [6] 長崎市教育委員会編:長崎古写真集,居留地編,1995.
 [7] 伊藤政光:造船図面を読む愉しみ―大湊造船資料で知る技術と時代―,伊勢市造船資料展示会
   講演会,2015.
 [8] William John Macquorn Rankine, Isaac Watts:“Shipbuilding, Theoretical and Practical”,
   Mackenzie, 1866.
 [9] 野本謙作,増山豊,桜井晃:復元菱垣廻船「浪華丸」の帆走性能,関西造船協会誌,第234号,
   2000,pp.115-124.