日本船舶海洋工学会 関西支部 海友フォーラム K シ ニ ア
Kシニア の トップに戻る 海友フォーラム の トップに戻る 2018年 の トップに戻る


海友フォーラム 第34回懇談会 報告

文責 城野隆史

1. 日 時 : 2018年1月17日(水) 14:00~18:30
   会 場 : 川重 海友館新館

2. 参加者 : 27名   (順不同、敬称略) 
         井沢雄幸、石津康二、大柴隆士、岡本 洋、小野靖彦、加藤健二、河合敏雄、小林幹弘、
         小寺元雄、塩田浩平、城野隆史、島本幸次郎、瀬川治郎、富田慎一、津垣昌一郎、
         長野 健、並川俊一郎、野澤和男、濱田孝一、濱田 淑、平田紘士、藤村 洋、増本 彰、
         増本 敞、矢木常之、 山中直樹、山野惟夫

3. 講 演


  1) 「フィンランドを訪ねて」
      ---オルキルオト島の使用済み核燃料埋蔵プロジェクトに学び、
                      日本の核燃料サイクルを考える---
  ・・・・・ 島本幸次郎さん

 オルキルオト島はヘルシンキから約200km北西の町・ラウマから、車で30分ほどのボスニア湾の沿岸にある。 この島には現在、加圧水型原子炉3基を備えた発電所がある。
 1970年代から稼働開始したこの原子力発電所のヤード内には、使用済み核燃料が中間貯蔵されている。 この処置を巡って、40年前からフィンランドは国家を上げて鋭意検討してきた。 その間、オルキルオト島が頑丈な花崗岩の岩盤であることを確認し、地下層や土質のボーリング調査、環境アセスメントの評価を行ってきた。 結論として、地元の合意を得て、島内の原子力発電所敷地内に地下400メートルの洞窟(オンカロ)を掘り、使用済み核燃料を直接埋蔵することを決定した。
 発生した使用済み核燃料は、一旦中間貯蔵プールで冷却したのち、キャニスターと呼ばれる二重の金属容器に納められる。 地下400mには掘削した横穴の空洞がある。 そこから横穴が櫛状に何本も伸びてゆく。 その横穴の底面に沢山の立穴を掘り、各キャニスターを縦にして一個ずつ埋めてゆく。 400mの底に達するには、キャニスターなどの重量物をトラックで運ぶための幾重にも曲がった緩い傾斜の長い斜坑と、作業員やその他の物資を運べるエレベータの垂直坑からなる。 2020年以降埋蔵を開始する計画である。

 フィンランドは、政府主導の下、電力会社と共同して40年間にわたる研究を重ね、このような直接処分(ワンスルー)方式を採用した。 その理由として次のことが推定される。
      1.再処理装置や高速増殖炉の開発・建設には年月を要し、設備は高価。
      2.運転は技術的に困難(濃硝酸や液体ナトリュウムの取り扱いが難しい)。
      3.使用済み核燃料に含まれるPu239はわずか1%で、処理費用が高価でペイしない。

 一方、日本の使用済み核燃料は再処理方式をとっている。 再処理してプルトニュウム、ウランを抽出し、高速増殖炉で使用したり、MOXにして再利用する計画であるが、高速増殖炉「もんじゅ」は廃炉が決定した。 六ケ所村にある日本原燃の再処理工場は1997年の完成予定が、20年以上たっても完成のめどがつかず、原子力規制委員会は安全審査を中断している。 再処理方式の核燃料サイクルは事実上破綻したといっても過言ではない。 使用済み核燃料は、各原発ヤード内の冷却プールで数年間冷やされた後、再処理されることになっているが、再処理設備の現状が上に述べた通り破綻しているため、各ヤードの冷却プールは満杯に近づきつつある。 どうするのか、展望が見えない。 使用済み核燃料やその他の核廃棄物は、我々が利用した電力の次世代への負の遺産である。

 島本さんの提案は;
「日本の核燃料サイクル計画を見直し、フィンランド式直接処分(ワンスルー)方式を検討すべし」というものであった。

 出席者からは、意見続出であった。 要約すれば;
1..日本は使用済み核燃料をフランスに運んで細々と再処理し、Pu抽出やMOX燃料などにしているが、大変高価である。 思うに、我が国の再利用・リサイクル方式は破綻状態にあるのであるから、次の方針を打ち出さざるを得ないところに追い込まれているのにもかかわらず、何の方針も示されていない。 なぜか?
2.原子力政策は国策・民営である。国が方針を示さねばならぬが、国民にはそれが見えない。 小泉元首相らは原発建設反対を唱えているが、原発を止めても、莫大な量に上る既存の使用済み核燃料は処理しなければならない。 一方政府の電力長期計画では、原発を維持する方針である。 維持するのも結構だが、バックエンドの処理政策を示さず、発電だけを維持するのは、片手落ちで、理論的矛盾である。
3.なぜこんなことになるのか、結局、学者と官僚が原子力村を牛耳り、国策を決めても、民間の技術者が関与しないまま進め、高度な技術を要求される運転技術者が存在しないまま、または関与しないまま作ったシナリオが招いた悲劇ともいえる。
4.船の場合は、太古の昔から、船を運航する技術者・船乗りがいた。 それに造船技術や制度が付随して、世界的な安全体系へと発展してきた。 ところが日本の原発は、運転技術者不在のまま、日米原子力協定の下、外国技術を丸ごと導入することによって実用化に走った。 安全対策は、現場の状況の把握不足のまま、学者と官僚が先導し、民間の実務技術者は指示待ち状態に置かれ、維持管理にあたるだけであった。 このような不備な環境では、現場の技術者が育つはずもなく、原発を受け入れる地区住民の同意も得られない状態となった。  ------etc

 討論は、講演テーマと離れた問題まで拡大し、活発で面白かったが、最後はややとりとめのない議論で時間不足に終わってしまった。 然し、講演者の主張は出席者に理解されたことと思われる。


 
 次回 : 加藤健二さん 「日本語と漢字」   4月の予定。

                                                        以上