5 大陸変動・生物進化の共進時代 (地図を用いた歴史の旅)
5.1 造山活動の分類
5.5億年前以降、連続して起こった造山活動は次の4種類に分類できる。
@大陸衝突型 褶曲山脈を造る ヒマラヤ、 アルプス、 アパルチア
A海洋プレート沈込型 付加体、山脈、変成体、火山、盆地ができる
日本列島、 ロッキー、 アンデス
B洪水玄武岩型 巨大玄武岩のマグマが一定期間地表に噴出
ハワイ、 東南アジア、 スーダン、 デカン高原、 シベリア
Cパルスプルーム噴出型 (プレートの残滓メガリスの局部崩壊により噴出)
シベリア、 アフリカ、 欧州
5.2 ヌーナ超大陸誕生 19億年前 (太古)
27億年前にできたケノリア大陸は未公認、ヌーナ超大陸(19億年前)が世界最初の大陸であった。 超大陸とは島嶼の80%以上が集結した大陸のことを云う。 ハーバード大学のホフマンがヌーナ大陸と名付けた。 またの名をローレンシア大陸とも云う。 北米のローレンシア台地からそう名付けられ、ケノリア大陸の地質を引継いでいる。 8億年前に出来たロデイニア超大陸もヌーナ大陸が変身したものである。現在は、ヌーナ大陸の地質は、世界各地に分散している。 Fig.5に真黒く塗られている箇所がヌーナ大陸の名残である。 中国、オーストラリア、ブラジル等の巨大な鉄鉱山は図の真黒く塗られた地域にあり、27億年前以降、シアノバクテリアが放出する酸素で造られた海底鉄鉱石が縞状になって、さながらバームクーヘンの洋菓子断面のように、諸大陸の地質の中に取入れられたものである。
Fig.5 世界地質分布図 文献1),2) 黄円はスーパーホットプルーム。白円はスーパー コールドプルーム。
5.3 ロデイニア超大陸誕生 8億年前 (先カンブリア時代)
10億年前から地球の活動は除々に衰え、地表は寒冷化し始めた。 前回のヌーナ超大陸(19億年前)の分裂以来、永らく途絶えていた陸地集結が始まった。 この時期は地球活動が不活性化し、地球内部からの放熱が減り寒冷化が始まる。
当時の陸地には河川ができ、風化、浸食が進行し、泥などが海中に崩れ、カルシュウムイオンが海水に溶解した。 希薄になった大気中二酸化炭素は海水に溶け、化学反応により大量の炭酸塩岩(石灰岩)が海底に堆積した。 現在、世界各地の石灰岩の山脈、鍾乳洞等は、こうして造られたものである。
大気中二酸化炭素の減少は温室効果を失わせ、寒冷化はひどくなり、赤道も氷河に被われた。 そして氷河は太陽輻射熱を反射して史上最大規模の寒冷化が訪れた。 スノーボールと化した地球は、永遠に活動を停止するかのようであった。 現在の温暖化問題とは逆の 「温室効果消失寒冷」 の危機であった。
この危機を救ったのが「海水のマントル内流入」で、またもやミラクルな出来事が起こったのであった。 当時、海水は地球内に流入しても、高温のため水蒸気となって大気中に放出され、地球活性の役には立たなかった。 しかし、マントル温度は除々に低くなりつつあった。 ロデイニア超大陸が形成された7億5000万年前、地下30kmの深さの温度は500度C以下まで低下し、大量の海水が一挙にマントル内に流入を開始した。
当時の海水準は現在より数百メートル高かった。それが除々に低下し、5億5000万年前に現在と同水準になり、海没していた陸地海岸線は後退を始めた。 海水流入により、上部マントルの粘性低下、融点降下、含水によるマントル変性等で造山活動は俄然、大活性化した。 7億年−5億年前の造山量は史上最大であったそうである。
氷河は融け始め、酷寒は解消へ向かった。海底では多細胞の軟体生物エデイアカラが全盛を迎えていたが、海岸線が後退し、藻類が死滅しても遺骸を土砂が埋没し、腐食しないので酸素消費を防ぎ、大陸棚の浅海にはシアノバクテリア、新種の藻類等が大繁殖し、光合成が盛になり大気中酸素が急増、5億5000万年前頃には大気中酸素は容積比20%を越え、飽和状態に達した。 オゾン層ができて太陽紫外線を遮断し、生物の陸上生存のための環境が整ったのであった。
Fig.6 ロデイニア超大陸 7億年前 先カンブリア時代 文献1),2)
(Fig.6 − Fig.19 著者描く)
ロデイニア超大陸の地図をFig.6に示す。 超大陸は経度180度付近の赤道上、パンアフリカ海(当時の大海洋)上に存在した。 陸岸周辺には激しい海洋プレートの沈込みがあり、大陸下にスーパーコールドプルームが出来ていたに相違ない。 7億年前、「マントルオーバーターン」 が起こり、南太平洋スーパーホットプルーム が出現し、大陸は分断し、海嶺が出現した。
パンサラサ海(太平洋)が現れ、地球の大変動が始まった(Fig.7)。 古日本は、この時、ローレンシア、シベ リア、北中国の付近に、小陸片として誕生した。 南太平洋スーパーホットプルームは現在も存在し、太平洋中央海嶺へ熱エネルギーを供給している。
5.4 地質年代の内容
最近の5.5億年間は「顕生代」と云う名称が付けられ、生物の進化躍進時代であった。 「古生代」 「中生代」 「新生代」 と分けられ、さらに 「紀」
の区分が付けられている。 各地質年代の改訂堆積物は岩石(チャート)となり、プレート運動で陸岸に折り込まれ、今も残っている。 地層・生物化石の発掘調査は、19世紀始めから行われ、Table
2に示すような紀名が付けられた。
Table 2 地質年代の表
5.5 ゴンドワナ超大陸誕生・カレドニア造山変動 5.5-4億年前
(カンブリア紀、 オルドビス紀、 シルル紀)
Fig.7 ロデイニア超大陸の分裂 6.5億年前 先カンブリア時代 文献3)
上図、Fig.7 は、先カンブリア時代、ロデイニア超大陸が分裂、ゴンドナワ超大陸ができる途中、6.5億年前のものである。 未だ海水準が高く、陸地水没、氷河が残っている時代の地図である。 5.5億年前、原生代/古生代(V/C)境界時、ゴンドワナ超大陸(アフリカ、南米、豪州、南極地塊の集合)が誕生した。 大陸下のスーパーコールドプルームにより各地塊は結集したが、新しくできたパンサラサ海(太平洋)のプレート拡大に押されて、ローレンシア、北欧、グリーンランド、シベリアは南東方向へ、東回りに地図の裏側、経緯零度付近、北半球に移動する。 北中国、南中国は北西へ移動を始める。
このようにゴンドワナ超大陸は完全な超大陸ではなかったが、南半球にある諸大陸の代表として、後年まで呼称され続けるようになった。 「ゴンドワナ」
の意味は南国だけに存在する古い地質の中で見付かった植物の名前である。 さて日本地塊は、この時代に北中国に合体した。 既述のとおり海水準は現在並みまで低下し、かつ、激しい造山活動があって、陸地面積は増大した。 大気中酸素は飽和状態、オゾン層もでき、気象も温暖であったが、この時、生物大量絶滅が起こっていた。 地球史上、最初の生物大量絶滅であった。 海水の塩分が急増し、古い細胞膜では浸透圧の関係で生体維持困難、生態系が大きくかわったのである。 また、海面後退が生物死滅に影響したことも考えられる。 いずれにしても、絶滅の詳細は、化石等が現存しない過去のことであり、その詳細は不明であると云う。
Fig.8 ゴンドワナ超大陸の移動 5億年前 カンブリア紀末 文献3)
上図、Fig.8は5億年前、カンブリア紀末、古生代に入るところの図である。 この地図は経度零度から見た図に変わっている。 ローレンシアは経度零度付近の赤道上に、北欧、シベリア、カザフスタン、中国(含日本)も北半球に到達しようとしている。
ゴンドワナ超大陸本体もパンサラサ、プレートに押されて西方へ移動中である。 海水準は再び上昇を始めている。 陸地の海没度合が増している。 陸地周辺に海溝ができ、激しい沈込みにより
A海洋プレート沈み込型、Cパルスプルーム噴出型の造山活動が起こっている。
パンサラサ海(太平洋)の拡大に伴い、ロ−レシア、シベリア、北欧、ゴンドワナ大陸に囲まれて、イアペタス海(ギリシャ神話から名付けられた)ができた。 浅海であった。この海に
「カンブリア紀の大爆発」 と呼ばれる種々の無脊髄動物、炭酸カルシューム等の固い殻をもつ、巻貝、三葉虫および原生動物の流れをついだ軟体動物、クラゲの祖先が多数出現した。突然の動物進化の驚くべき爆発であった。
カナデイアン・ロッキーの高地で発掘され 「バージェス頁岩」 と名付けられ、有名な化石が保存されている。 その中には想像を絶する、奇妙きてれつなものがある。 すべて絶滅したが新種生物の宝庫であった。 ロブスターサイズの海老の祖先のような大型補食動物も現れていた。 海棲植物では今みられる海藻の殆どの祖先が、この紀に出現したと考えられている。
カンブリア紀の爆発的進化の理由として酸素過剰が影響したのではないかとフォーテイは述べている。 (文献4))
Fig.9 ローレンシア、北欧、シベリア 接近 4.5億年前 オルドビス紀 文献3)
上図、Fig.9は、オルドビス紀中期(4.5億年前)の図である。 この時代の生物は、海棲節足類が多く、代表的な三葉虫とともに、筆石と呼ばれる動物が生存していた。 オルドビス紀(5-4.4億年前)から、サンゴの祖先が出現して、大量の
「礁」 が赤道付近を中心に発達した。 けれども、オルドビス紀の終わり、海面は上昇し、氷期が訪れた。 多くの生物の大部分が死滅した。 現在詳細不詳である。
シルル紀(4.4-4.1億年前)の海は三葉虫、ウミユリ、オウム貝の時代であった。 カレドニア地殻変動により沼湖、河川が多く生じ、海棲節足動物が河口、湖、川等に入り込み、それらの中には人の背丈程もある大型ウミサソリも居て、体の外側を固い骨質板で覆われ
顎はなく、初期の魚を捕獲した。 植物の上陸はシダ類から始まった、同時に土中の有機物を食し、糞を植物に栄養として与える土壌分解動物群が植物と同時に上陸、動植物相互依存、目立たないが重要な仕事が既に始まった。 次いで、河川の節足動物が上陸し、昆虫も出現した。 このように、「生物の上陸」
は海から陸へ、一挙になされたのはなく、河口、湖、川、沼地等を経由して、徐々に行なわれたのであった。
5.6 カレドニア、バリスカン造山変動 4−3.5億年前 (デボン紀)
Fig.10 ローレンシア、北欧衝突合体、カレドニア造山変動 4億年前 デボン紀初期 文献3)
上図、Fig.10はデボン紀初期(4億年前)の図である。 ローレンシアと北欧はシルル紀中期、(4.2億年頃)に合体しユーラメリカが出来た。 @大陸衝突型、Cパルスプルーム型造山活動によって、スカンジナビア山脈、アパルチア山脈(北米)、スコットランドができた。 これを、カレドニア造山地殻変動と呼ぶ。
ゴンドワナ超大陸はさらに西方に移り、ユ―ラメリカに接近中、レイク海ができた。 日本は極東に位置するようになった。 パンサラサ海(太平洋)の大きさは最大になった。
氷期は終わり、温暖になったが、デボン紀(4.1-3.6億年前)の海中では 「魚類の時代」 が到来、サメの祖先も現れた。 当時の魚類の背骨は現在のように、しっかりしていなかったが、魚類は脊椎を持つ最初の動物で、後世、上陸して、両生類、は虫類、哺乳類へ枝分かれしたのであった。 現在の主要動物の共通祖先である。 陸上では、シダが栄え、デボン紀後期には30mを越す森林となり、昆虫が多生、両生類が生まれた。 (ゴンドワナ大陸でも同様の生物多様化が行われた)。 大陸集結へ向けてアジアスーパーコールドプルームが大陸下に出来て、ユーラシア大陸が底から吸引力を受けるようになった。 デボン紀末、中程度の生物絶滅があった。 海中生物の一部であったようである。
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