日本船舶海洋工学会 関西支部 海友フォーラム K シ ニ ア
Kシニア の トップに戻る 海友フォーラム の トップに戻る 2008年 の トップに戻る


要約・地球の歴史  file−3

5.7 パンゲア超大陸へ向け大陸集結  3.5−2.5億年前  (石炭紀、ベルム紀)             


    Fig.11 バリスカン造山変動  3.5億年前  石炭紀初期     文献3) 
 
 上図、Fig.11は石炭紀初期(3.5億年前)である。 今のフランス、ドイツに当たる地域の造山活動バリスカン造山地殻変動の時期である。 「バリスカン」 とはドイツにあった古民族の名前に由来する。 大陸はパンゲア超大陸の形成に向けて集結を始める。 日本ほか東南アジアはA海洋プレート沈込型による造山、付加体成長を始める。

 石炭紀(3.6-2.9億年前)は植物が最も繁栄した時代であった。 聳え立つ植物間では光の争奪をめぐり生存競争が激化し、樹高は30mに達し、下枝はない。 巨大シダ植物が沼地に大森林を造った。 倒木は泥に埋まり、炭酸同化作用で炭素を固定し、石炭が生成された。 現在、人類がその蓄積エネルギーを利用している。 地上には昆虫・両生類が発達した。 巨大なトンボ(胴体長50cm、翼長80cm)の化石が見付かっている。 巨大ゴキブリ、ムカデ等も誕生した。 陸棲サソリがうごめいていた。 海ではウニの一種ウミユリと珊瑚が栄え、広大な石灰岩と珊瑚礁を造り、後世へ残した。 石炭紀は生命が満ち溢れた世界であった。 ユーラメリカ、カザフスタン、中国等は温暖多湿の気候であった。 また大陸に囲まれた浅海(古テチス海)は生命が繁盛する穏和な豊饒な海であった。

 この時代は酸素過剰であったらしい。 証拠として、世界各所で山火事発生の跡が地層内から見付けられている。 この酸素過剰が植物、昆虫の巨大化を生んだものとフォーテイは云う (文献4))。
 「古テチス海」(イアペタス海の延長)の名称は、水の神オケアヌスの妻「テチス」の名に因んで、地質学者エドゥアルト・ジュースが名付けたものである。


        Fig.12  大陸結集、氷期到来  3億年前  石炭紀末     文献3)

 上図、Fig.12は石炭紀末、ペルム紀直前の図である。 ゴンドナワ超大陸は、3億年前、アジアスーパーコールドプルームに引かれて北上し、ユーラメリカと衝突した。 アフリカ、南米の北部は再び赤道近くに位置するようになった。 シベリア、カザフスタン、中国、日本も集結を早める。 スーパーコールドプルームの吸引力により古テチス海が大きくなる。

 ペルム紀(2.9-2.5億年前)に入ると、地球活動は除々に衰え始め、氷期が訪れ、ゴンドワナ南部に氷河が明瞭になる。 氷床はゴンドワナ大陸の内部に位置し、それが氷床の発達を促した。 北極点の氷冠は海が多いため厚さが薄いが、ゴンドワナ大陸南部の広範な地域は海による緩衝効果が薄れ、巨大な氷床が発達した。 今のアメリカ北部、アラビア等の砂漠、豪州、インド等にもペルム時代氷河の爪痕が残されている。

 海水準が上昇し、海岸線が前進した。 気候は悪化し始め、寒冷、乾燥化し始めた。 シダの大木は滅び、シダから分岐した裸子植物が繁茂した。 石炭が大量に生成中であった。 動物は両生類が繁栄したが、乾燥に耐えるために爬虫類が枝分かれ誕生した。 海は豊饒で数千種類の生物が満ち溢れた。 けれども、パンゲア超大陸誕生のP/T境界時、次節で述べる、生物大絶滅が起こった。


5.8 パンゲア超大陸誕生、アルプス造山変動、大西洋誕生  2.5−1.5億年前
    (三畳紀、 ジュラ紀、 白亜紀前期)
  


         Fig.13  パンゲア超大陸誕生  2.5億年前  P/T境界     文献3)

 上図、Fig.13は2.5億年前、パンゲア誕生(P/T境界)時の図。 海水準は現在並みに戻り、温暖になったが、乾燥状態であった。 赤道の両側は広大な砂漠だった。 サソリぐらいしか棲めなかった。 現在のアフリカ、南米の北部はもとより、北米中央部から欧州にかけて砂漠がひろがっていた。 インド、南極、豪州の広い範囲では氷河ができた。 ソテツ状シダ類だけが生える冷涼の不毛の地であった。 中国、マレーシア、ベネゼーラは熱帯雨林、シベリア、モンゴル、北アメリカの一部、石炭紀にシダの森であった所は、裸子植物の森林で被われていた。その地下では石炭が生成中であった。

 古テチス海には、石炭紀から進化を続けてきた海棲生物が多数生息していたが、パンゲア誕生(P/T境界)時に絶滅した。 パンゲアの北半球大陸には、もう一つ、やや小さな内海および湖沼等があった(Fig.13参照)。 そこは、激しい乾燥の洗礼を受け、沼、湖ができ、岩塩、石膏、硬石膏など「蒸発鉱物」が堆積した。 後世、「人類の歴史、欧州の産業革命」 で、石膏、漆喰等の化学工業が興隆したが、この 「蒸発鉱物」 が工業発展のルーツであった。

 パンゲア誕生前後2000万年間は全海洋、海中酸素が大欠乏状態であった。 京都の竜安寺の石庭等の赤、白、緑、黒色の玉砂利は大昔の海底堆積岩から成っていて、プレートテクトニクスにより日本列島に付加体として蓄積された物である。 パンゲア超大陸誕生時、パンサラサ海、中央部海底にあった堆積岩が現在、木曽川河畔に残されている。 これを検査した結果、当時の海底の酸素欠乏状態が確認されたと云う。

 同様に古テチス海や、パンサラサ海の他の部分でも酸素欠乏であったことが、各国の調査で判明した。 この時、生物大量絶滅があり、海陸共に全滅であった。 その原因として、造山活動の激化による異常気候、大気汚濁、酸性雨、温室効果、温暖化現象、植物枯死、大気中酸素欠乏、陸上生物死滅、海中植物枯死、植物性プランクトン死滅、海中酸素欠乏、海中生物死滅と云ったシナリオが想定されている。

 次に造山活動としては、ゴンドワナ東部の下にアフリカスーパーホットプルームが出現、またパンゲア周辺のプレート沈込みの影響で各所にミシンの目の穴のようにパルスプルームが発生した。



  Fig.14  大西洋出現 アジアスーパーコールドプルーム噴出 2億年前 三畳紀末  文献3)

 上図、Fig.14は2億年前(三畳紀末)、ゴンドワナとユーラシアの間が割れ、海嶺ができ、中央大西洋が誕生、拡大を始める。 シベリア、アジアに B洪水玄武岩型マグマの噴出が起こり、アジア大陸が成長する。 また古テチス海は周囲からの沈込みにより消滅し、新しく、今のインド゙洋に当たるテチス海ができ、トルコ、イラン、チベット等がアジア大陸と合体した。 アルプス造山変動が始まった。 哺乳類の先祖が誕生した。 海水準がまたも上昇を始め、欧州の陸地の海没が目立つようになる。

 三畳紀(2.5-2億年)、乾燥した陸上生活に強い爬虫類が栄えた。 最初の恐竜の化石が三畳紀3番目の地層から発見された。 この頃の恐竜は体長3メートル以下であった。 海には魚竜と呼ばれる爬虫類が現れた。 三畳紀末に中程度の生物絶滅があった。


       Fig.15  大西洋中央海嶺出現  1.5億年前  ジュラ紀末     文献3)

 上図は1.5億年前(ジュラ紀末)の図である。 裸子植物が栄え、恐竜の種類も増え、巨大化した。 高い木の葉も食べることができた。 草食恐竜を餌とする肉食恐竜も現れ、恐竜の時代が始まった。 空には翼竜が飛び、海にはアンモナイトが現れた。 始祖鳥、哺乳類も出現した。

 パンゲア、古生代/中生代(P/T)境界時の大量絶滅について一説あり。 それは海底温度が温暖化により2-3度C上昇し、大陸棚外側の海底に埋没しているメタンハイドレートが気化し始め、メタンの温室効果はたいそう大きいから、地球温暖化に拍車をかけ、それが原因で酸素欠乏、生物大量絶滅を誘発したと云うのである。 メタンハイドレートは次のようなものである。 地中に残った二酸化炭素にメタン発酵バクテリアが作用し、メタンガスに変成される。 そのメタンガスは地中の隙間を上昇、地下1000m程の所、高圧のため氷点が高くなっている場所に、氷の結晶に包まれたメタンハイトレードの結晶となって蓄積される。


5.9 パンゲア分裂、大陸移動  1億年前−現在  (白亜紀後期、 第三紀、 第四紀)


    Fig.16  大西洋拡大、アラスカ ランドブリッジ出現、ゴンドワナ移動開始
                            1億年前    白亜紀      文献3)
  

 上図、Fig.16は1億年前(白亜紀後期)の図である。 図にみられるように大西洋拡大開始、南米とアフリカは離れ、アフリカと豪州も移動中である。 以後、それらの大陸の動物の生態系が変わることになる。 北米プレートが移動により日本列島の下に潜り込み、また、このプレートは極東シベリアのオホーツクの付近でユーラシアに合体し、カムチャッカ半島、アリューシャン列島ができ、アラスカランドブリッジが出現した。 ベルホャンスク山脈はこの時にできた褶曲山脈である。


 白亜紀(1.4−0.65億年前)は、恐竜の全盛の時代、鳥類、哺乳類も増えてきた。 温暖期であった。 動物類はランドブリッジを利用してユーラシア、北米を相互移動したであろう。 いわゆるモンゴリアンロードが利用されたであろう。 海水準上昇のため、北米中部および中央アジアは海没状態であった。 南半球ゴンドワナでは、各大陸の分散・移動に伴い、それぞれに棲息する動植物は互いに分離され、それ以降、生態系の発達が独自に変わるようになった。 豪州では、天敵(食肉動物)がいなくなりカンガルー・コアラ等の天国となった。 マダガスカル島では独自な動植物が育った。 南米では独特の草食動物が栄えたが、北米・南米両大陸がパナマ地峡で接触するに従って、北半球生まれの食肉獣が再び南米に渡来した。


          Fig.17  中生代/現生代境界   6500万年前     文献3)

 上図、Fig.17は中生代/現生代(K/T)境界時である。 メキシコ湾に直径10km程の大隕石が衝突した(図の印)。 クレーターは直径100km、深さ15−25kmあったと云われる。 その衝撃と粉塵の他に、隕石衝突で引起こされた異常気象、毒ガス、酸性雨、酸欠、光合成不能等により、海陸、生物大量絶滅が起こり、恐竜、アンモナイト等、中生代の生物が途絶した。 世代交代、哺乳類の大進化を迎えた。 「温血性」 「胎児保育」 を利点とし、きたるべき厳しい環境を乗り越えた。

 気象は温暖、海水準は現在並みに戻ったが、中央アジア、東欧、北米、アフリカの一部は未だ海没状態であった。インドは北上中で4500万年前にユーラシア大陸に合体した。 インドの移動中、デカン高原で B洪水玄武岩型溶岩噴出がかなりの期間続行。 大西洋は引続き拡大中である。 大西洋には海溝が存在しない。 日本に●が付いている。 3500万年前位から寒冷化が訪れた。


       Fig.18 アフリカパルスによる地中海変動   1000万年前     文献3)

 上図、Fig.18は1000万年前の図であるが、2000−1500万年前、アフリカスーパーホットプルームのパルス活動が激しくなり、東アフリカ、ビクトリア湖付近から紅海に至るグレートリフトバレー(大地溝帯)ができ、アラビア半島とユーラシア大陸が繋がった。 ザグロス山脈が造山された。 インド洋と地中海が分離された。 インドは既にユーラシアに合体済みであったが、プレートはユーラシアの下を2000kmも深く潜り込み2500万年前にヒマラヤ山脈は4000mの高さまで盛り上がり、1000万年前8900mの世界最高峰とチベツト台地がプレートの浮力によって造られた。

 海水準は低下し、東欧、中近東、中央アジアは陸地となった。 ユーラシア系哺乳類とアフリカ系哺乳類は陸地を経て相互移動するようになったと思う。 熱帯、温帯地域に被子植物が栄えるようになり、「花と昆虫、鳥」 の相互協力時代が始まる。 緑と茶色の森林に赤、黄色の彩りが生れた。 欧州には現在のオーストリア・ウイン当たりから、アラル海をカバーする大湖ラックマールができた。 当初、大量の水を地中海に供給したが、造山変動で、地中海沿岸が持上ったので大湖の河は北へ流れ、600万年前、地中海は干上がった。
 一方、大湖はカルパチア、カフカス山脈の造山で消滅し、現在の黒海、カスピ海、アラル海だけが残った。 550万年前、ジブラルタル海峡が開き、新しい地中海ができ、鮮新生の地中海生態系が生まれた。 180万年前の第四紀になると、氷期が始まった。

 500万年前、アフリカ、グレートリフトバレーで人類(猿人)誕生、ユーラシアへ渡り、分布、きびしい氷期に対し、マンモス等、耐寒冷哺乳動物も現れたが、旧人達は火を使う等、知恵を使って、ギュンツ・ミンデル・リス氷河期を乗切った。 20万年前、やはりアフリカ、グレートリフトバレーで新人(ホモサピエンス)が誕生、10万年前、ユーラシアへ分布、ウルム氷河期に全世界に分布した。 ウルム氷河期が終わると 「人間の歴史」 が始まった。


            Fig.19  現在の地球                文献3)

 上図、Fig.19に現在の世界地図を示す。 海嶺・海溝を記入した。 これをみると、大西洋は拡大中、太平洋は縮小中、アジアスーパ-コールドプルームは健在だから、目下、南北アメリカおよび豪州が極東へ接近中である。 5000万年後、日本列島は沈没し、日本列島の近くには豪州が存在する予定である。


 その後、世界は寒冷化を迎え、2億年先には北米大陸がユーラシアに衝突、太平洋は完全に消滅するだろう。 新超大陸の成立で、やがて「マントルオーバーターン」が起こり、再び超大陸分裂が繰返される。 人類始め哺乳類が生存しているかどうか不明である。 それでも、地球に水が残っている限り 「地球の歴史」 は繰返されるだろ。 太陽が膨張して地球を焼き尽くす日がくるまで…… 。

 これで8億年前から現在までの 「地球、過去の旅」 を終わる。
 


目次に戻る    file−4に進む