船のカタチ(33)  ノルウエイの貨物船、コンテナリゼーションへの対応
             TALABOT(T船)、HOEGH CLIPPER(HC船)、JOHN BAKKE(JB船)、ALTANGER(A船)

                                                                   2012-09 神田 修治


1960年代コンテナリゼーションの嵐がおしよせました。 日本、英国、米国等の船社は大型高速で 荷役装置なし(ギヤレス)のコンテナ専用船を開発して、それまでの「Port to Portの海運」から、荷役は全面的に港湾設備に依存し、さらに陸上輸送を取り込んだ「Door to Doorの物流システム」へという新・ビジネスモデルを開発し営業しました(船のカタチ-20参照)。 しかしコンテナ船そのものは物流システムの一部分として、「大型で高速のハシケ」というようなものとなり、船としての自己完結性、自律性は低下したといえると思います。

この嵐の中、ノルウエイ船社は荷役装置を持ったコンテナ船を建造・運航したが、それを上図に示します。
T船は従来からの高速定期貨物船。コンテナを積むが甲板上のコンテナ積段数は1~2段と少ない。
HC船とJB船はクレーン等のブーム下部支点を高くして、甲板上のコンテナ積段数を多くしました。
A船は独特の設計で、ハッチ開口を大きく、船倉を箱型とし、荷役装置は走行式門型クレーンを有しています。

船のカタチという観点からは、T船は見慣れたスマートなカタチです。HC船、JB船は背が高く荷役装置の林立が目につくが、見方によっては機能的ともいえ、これもまたよいカタチと思います。 A船は走行クレーンがあるため異形といえ、クレーンがなるべく前へ走行できるよう、上甲板舷側は前方まで並行直線で船首部は極端なフレアとなっており、不自然なカタチだと思う。 フレア部のパンチング等局部強度の問題もあると思います。
なおT船の船主Wilhelmsen社は えるべ丸(船のカタチ-21)と類似のギヤレスコンテナ船TOYAMAを持ったが、その後DANISH EAST ASIATIC社に売船し、そのあとはRORO船に注力しています。

以上、コンテナ船化の嵐により世界の定期貨物船社がギヤレスコンテナ船へと流されてゆく中、ノルウエイの船社では荷役装置ありの貨物船を保有し、さらにコンテナ以外の貨物も積むための種々の工夫がなされましたが、その考えの根底には、船を大きなビジネスシステムの単なる一部分と考えるのではなく、その船だけで海上輸送というビジネスをやり遂げるという自己完結性、自律性を重視する考えがあるように私は思います。


船のカタチ(32)へ      目次に戻る      船のカタチ(34)へ