日本船舶海洋工学会 関西支部 海友フォーラム K シ ニ ア
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海友フォーラム 第8回懇談会 報告

2009/10/22 城野隆史 作成

1. 日時 : 2009年10月6(火) 14:00~18:00

2. 会場 : 川重パトリシア会館 会議室

3. 参加者 : 17名  (敬称略) 

  岡本洋、 野沢和夫、 河合敏夫、 赤木新介、 藤村 洋、 塙 友雄、 長野 健、 外山 嵩、 小林幹弘、
  津垣昌一郎、 藤田 実、 城野隆史、 富田愼一、 黒井昌明、 八木常之、 堺由輝、 小野靖彦


4. 講演

4-1 輸出鉄道車両四方山話 ・・・ 小野靖彦さん、 堺由輝さん
*造船屋として活躍された小野さん、堺さんが車両部門の関わられた輸出客車車両の商談や
  技術問題の概要を紹介頂いた。
*船を一輪車として 自動二輪車 3輪車 4輪車 と車製品に続き 航空機を5輪車6輪車とし
  車輪の数に合わせた製品を分類 その延長で客車車両の8輪車と続くという形のイントロに
  始まったわかりやすい解説。
*事故例と原因解明の事例を解説。 なるほどと思い、車両への親しみが深まった。
*鉄道車両の設計要件は、発注主とその國の安全委員会の考え方で、ケ-スバイケースに決ま
  り、船舶のような船級協会に相当するものがないことが、特徴である。
*アメリカのようにレール屋というジャンルがありレールをもっているところが発言権を持つことが
  あるとのこと。
*安全性については「そのようなことはあり得ない」として対策をそこで打ち切るような考え方は、
  欧米特にアメリカではとらない。 「もしそれが起こったらどうするか」という観点に立って、
  二段・三段の安全対策が講じるところが特徴的である。
*実物による衝突実験とかカンチレバータイプの座席とかの開発に苦労された話など興味深い
  ものの紹介。 一発勝負の実物実験を成功させ、構造解析結果とよい一致を得たことなど、
  苦労が偲ばれた。 
   
4-2 エストニア号海難事件 ・・・ 城野隆史さん、 岡本 洋さん
*1994年9月27日バルト海にて発生したエストニア号の沈没事故:1000人に上る搭乗者のうち
  の9割がなくなるという事故で 運航者-エストニア、 海域-フィンランド、 乗客の大部分
  -スウェーデン、3国にまたがる事件。
  事故直後これら3カ国による公式事故調査委員会結成され、3年後報告書が公開されたが、
  内容が不透明であるとして、議論が尾を引いた。
  一匹狼の造船屋、 建造国ドイツ、 RINAを中心とする学会で議論が紛糾。 ついにスウェー
  デン政府は2006年にはSSPAとHSVAに再調査を依頼し、2008年に報告が出た。
  それら一連の概要を報告。
*深夜の混乱の中から得た聞き取り調査からだけでは、原因究明には限度がある。 さらなる
  沈船調査が必要だろう。 ただ、エストニア号のような設計の船の運航には、細心の維持・
  管理が必要だと考えられるが、その点がずさんであったのではないかという疑念が強い。


5. 討議

 5-1 輸出鉄道車両に関して
   *レールの直線度は車両の動揺に影響する。 日本のレールの直線度はよいが 国によっては
     ひどいところもある。
   *新幹線のスピード競争の話題が出たことがあるが フランスのような広大で平滑なところを走る
     列車に乗ると 彼我の条件の差をつくづく感ずるとの意見。 見渡す限りの平原で花畑や牧場
     だけの中を疾駆する状況と山坂にトンネル・鉄橋の中を走るわが国の状況との違いは大きい。  
  
 5-2 エストニア事故に関して
   *塙さんが当時引合段階で船主と付き合った経験を話され 基本思想などのバックグラウンドの
     一部を紹介された。 MHI神戸も同時期に商談があったことが記憶にある。 小林自身も客船
     建造調査に関連してバイキングライン・シリアの乗船経験から塙さんのご意見よく理解できた。
   *エストニアは売船されたものである。 新造時の船の基本的設計思想と、それに伴う運航条件
     などが売船に際して十分伝わらない恐れがあるから対策が必要だろう。
   *公的機関の事故報告に対して個人が公然と反論するところは、注目に値する。 日本とは文化の
     違いを感じるが、あり得て当然といえる。
   *沈船は引き上げられないわけではない場所にあるにもかかわらず引き上げようとか 不明者の
     探査をしようとする空気がないのは 人命に対する宗教観の違いからだろうか? エストニアが
     国益上それに同意しないためか?.
   *まだ 論争は続くが決着はつかないだろう。


6. 次回予定
     来年1月下旬
     講演 : 造船用具・資料保存活動について ・・・ 藤村さん
     (これまでの講演2題では、毎回時間不足を来すので、次回から一題とすることになった。)

                                                         以上 


懇談会風景 (撮影 : 河合敏雄)