船のカタチ (16)  PEMBROKESHIRE型、STRATHARDLE型、LEUVE LLOYD型
                           – 外国船主/日本建造のHigh Speed Cargo Liner
  2011-04 神田 修治


山城丸(船のカタチ14参照)等の評判が伝わったためか、外国の名門船社から日本の造船所へ高速Cargo Linerの発注が相次ぎましたが、上掲はそれらのうちから3例を示します。 Blue Funnel社(BF)のPEMBROKESHIRE(P船)は同型船8隻のうち2隻が三菱長崎(MHI)へ発注され、他の6隻は英国造船所で建造されました。 Peninsular and Orient社(PO)のSTRATHARDLE(S船)は同型船3隻すべてが三井玉野(MES)で建造されました。 Rotterdam Lloyd社(RL)のLEUVE LLOYD(L船)はこの新船建造の同盟船社Nederland Line社(NL)の船もふくめた同型船4隻すべてが日本鋼管清水(NKK)で建造されました。 これらの名門船社はそれぞれ充実した設計・技術部を有しており、発注に当たって船の基本設計は船社から示されたようです。

これらの船は日本の高速Cargo Liner(船のカタチ15)の各船と同様にセミアフトエンジンとなっています。 上図では見えませんが、貨物ハッチはP船では1列、S船は2列、L船は3列であり、そして上図からもわかるように荷役設備は各船各様で実に多様です。 これは船の航海速力の高速化が進むなかで荷役速度(荷役時間)の隘路が顕在化してきたので、各船とも荷役速度(ポートスピード)向上のため貨物ハッチを2列や3列とし、各種のデッキクレーン等荷役システムの開発・改善・工夫が進められたものといえます。 さらに重量物の荷役の高機能化が進められ、スツルケンマスト(P船、L船)やハーレンマスト(S船)が採用されています。 このように多様に工夫されたこれらの船を見ていると、これらの船はCargo Linerとして種々の試行が行われたことを強く感じます。 しかしそれらの中からは「コレダ!」として広く採用されるに至ったというものはまだ出現していないという気もします。 「コレダ!」という答えはコンテナ船であったと、いまにして私は思います。

上記の名門船社には社船のカタチにも伝統的な独特のものがありましたが、上図の3船はいずれもそれまでの伝統を破って大きく変化したものでありました。 それには上述のような種々の工夫がなされたこともあると思うが、世界的な技術革新と経済社会の発展の中で、伝統的な定期貨物船のビジネスモデルも変革の時期を迎えていたのかとも感じます。

これらの名門船社の、従来からの伝統的な船のカタチには大変美しい、よいものがあったと私は思います。
次回はその例としてBF社の船のカタチの変化を絵にして見たいと思います。

                               


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