各位の主張 

1. 三宮一泰 [K-Senior.1565 ,1999/04/05] 2. 城野隆史 [K-Senior.1586 ,1999/04/17] 3. 三宮一泰 [K-Senior.1722 ,1999/06/28]
4. 大野道夫 [K-Senior.1747 ,1999/07/04] 5. 三宮一泰 [K-Senior.1758 ,1999/07/06] 6. 塙  友雄 [K-Senior.1776 ,1999/07/14]
7. 塙  友雄 [K-Senior.1854 ,1999/08/02] 8. 藤田  実 [K-Senior.1907 ,1999/08/19] 9. 三宮一泰 [K-Senior.1922 ,1999/08/22]

 昨年11月にストックホルムでEstonia沈没事故にかんするconferenceが開かれました。

 Naval Architect誌に概要が紹介されていましたので、そのまた概要を添付します。 責任者追求への熱気が感じられます。 日本人はこれほどキツク発言できないでしょうね。

 Conference on Estonia Disaster

 注 : これはNaval Architect誌1999年1月号に載ったNigel Ling (Myth and realities : why did the Estonia sink? の著者でJAIC reportに批判的な人である)による "Estonia disaster: calls for a new inquiry"の概要紹介である。

 1998年 11月 18日 に Estonia沈没事故( 1994年9月 )について討論するためのConferenceがStockholmで開かれた。  主催はNordic Transport Federation (NTF)及び Nordic Branch of the International Transport Workers' Federation (ITF)で9カ国から120名が参加した。

NTF Presidentの開会の辞 :
 多くの矛盾点が残っている。  実際に何が起こったのか、誰に責任があるのかを明らかにする必要がある。

ITFは UK naval architectual consultancy Burness Corlett & Partnersを起用して、Joint Accident Investigation
 Commission (JAIC)reportを評価してもらった。 この場でその結果を紹介する。

Buness Corlettの見解
 (1) Estoniaはseaworthyでなかった。  特に厳しい海象でもないのにvisorが落ちた。
 (2) Bow fittingsの設計及び承認手続きは不充分
 (3) Bow fittingsのmaintenanceはお粗末
 (4) SOLAS要求のcollision bulkhead の延長がされていなかった
 (5) 船級,船籍国、port stateの inspectors のすべてがこれらの状況を無視した
 (6) 新たに沈船を調査しより上質の写真を撮るべき(現在のものは画質不良)
 (7) 新たに調査会議を開き、関係者代表をすべて集め、互いに他の意見を聞けるような偏らないものにすること
 (8) 船級,船籍国、port stateはこの事故を防止できたはずである。

海員側の見解 (Swedish Ship Officers' Associationの代表)
 JAICは「Estoniaは seaworthyであったし主として建造者による設計欠陥により事故が起こった」と述べている。
 これには賛成できない。 JAIC reportは事故に結びつく要素をあいまいにして霧で覆っている。
 Seaworthyであるためには、設計、建造、設備、保守が適切であり、搭載品、乗員も適切、積荷/バラスト状態 も
 適切でなければならない。 EstoniaはSolasも満足せず、保守も不良( visor/bow rampの漏洩 )、積荷バラスト状態も
 不適切、乗組員は無能で安全に対する知識がなく、よって船はseaworthyではなかった。
 建造中に造船所が最初の船主にCollision bhd extensionが要求されているか質問したらノ−ということであった。
 このままで受け入れられたということは、最初の航路にたいしてはseaworthyであったと考えられる。
 その後flag and routeを変更した時になぜ適切な評価がされなかったのか。
 船はこの航路に合うように設計されてないのに間違った証書を発行したEstonia政府は責任がある。
 JAIC reportにこのことが書かれたないのは驚きだ。
 保守が悪かった(ramp tightness悪し)と言う証拠は沢山あるがJAICは採用していない。
 Heeling tankは片舷フル、片舷エンプティでしかも傾斜して出航している。  積荷状態が不適切である。
 乗組員は殆どがEstonianで、この種の船にたいして深い知識を持っていなかった。 Safety Planも不備であった。
 Estonian Shipping Co.とNordstroem & Thulinはかかる欠陥を知っていたはずで責任がある。
 船長は船を出航時にseaworthyとする責任がある。 もし出来ねば船主に報告すべきである。
 誰にも事故の責任がないというのは受け入れられない。  従って更なる調査を行うべきである。

ITF代表の発言
 Estoniaの調査で判明したことは、安全をうやむやにする秘密主義である。
 透明性がないので種種の憶測を生んでいる。  JAICのfindingsには疑問が多い。
 その航路に適しなかったゆえ船はseaworthyではなかった。
 JAICが考慮しなかった他の多くの調査結果があり、政治的な要素があったと思われる。
 すべての関係者とその調査結果をいれた透明性のある再調査が行われるべきである。

JAIC report側の反論
 <Uno Laur, final chairman of JAICの発言> :
 Building contractはdeepsea vessel without restrictionのものであった。
 本船はそれまで殆どheavy sea conditionに遭遇しなかった。  しかしStockholm/Tallinnがproper trading areaでは
 ないというのは馬鹿げている。
 Passenger certificatesは設計や建造には関せず、救命設備に関するものだ。  Estoniaは必要なすべての証書を
 持ち検査も受けていた。
 Qualified officers and crewを載せ、出航日にport state control inspection for trainingを受けた。 visor sealsは
 発注されていたが一部不足していた。 しかし事故とは関係なし。 Visorの内側に水がたまっているのは珍しいこと
 ではない。
 Collision bhd extensionがなく、 locking devicesが弱かったということは造船所を出る時目的にかなっていなかった
 ということであり、法的には、Tallinnを出航したときはseaworthyであったと考えられる。

 <Tuomo Karppinen, Finnish member of JAICの発言> :
 Estoniaが建造されていた同時期に、2隻の passenger ferry を建造していたあるFinnish yardはFinnish Administration
 と相談した結果 0.05L より前にある ramps は extension of collision bhdとは認めないと言われて、2隻ともpartial
 collision doorsを設けた。
 一方Finnish AdministrationはEstonia に関して質問を受けたことはない。
 Visor の設計と工作について Burness Corlett は厳しく批判しているが、bow connection の手書き計算書は造船所で
 作成されたものだ。 また造船所はHTを指定していたが、JAICの調査ではこれがMSで出来ていた。
 当時のLR ruleではlockingdevice の要求は2−3倍であり、Germanischer Lloyd ruleでは 6−8 倍 であった。
 過去の経験ではvisorの変形や漏洩は珍しくない。 規則ではweathertightを要求しており、rubber sealsなしで運航して
 いる船もある。
 Bow visorへの荷重は速度にほぼlinearであるとわかっているが、針路をheadingにとったのがより大きな影響を与えた
 ことが判明している。

Panelの討論
 Bengt Schager (JAIC memberであったが辞任した)  : JAICの"findings"に同意できず、reportを支持できなかったので辞任した。
 Werner Hummel (German Group of Expertsを代表して)が水線下からの浸水があったと主張した件につきTuomoKarppinenとの間で議論があった(略)。
 Prof Dr Hans Hoffmeister :  もしhingeのfatigue crackがseaworthinessに影響したことが分かったら JAICは再調査に参加するか。
 Uno Laur :  JAICは3カ国政府で設立されたものでもう存在しない。 再度設立する理由はないがもし3カ国政府が同意すればありえよう。
 Jerry Colman (Burness Corlett)  :  Estoniaが seaworthyであると書かれている理由が分からない。 多数の船が証書をもっていたが遭難した。 証書はseaworthyの証明にはならなかった。 Exemption of collision bhd extensionに関する書類がないのは何故か。 考えられることは、本船がprotected-waters service用であったからではないか。 Weathertightということは、水が漏らないことで、もし first barrierから水が入ってくれば当然注意すべきではないか。 もしsealがなくなったらbow visor は動く可能性があるので直ぐに対処すべきものである。
 Bengt Schager :  事故の最初の兆候が合ったときから crewは正しい動作をしていない。 アラ−ムは遅く、音を真面目に受け取っていない(多分そのような音になれっこになっていたのであろう)。

Visor design
 Jan One Carlsson (MacGregor) :  positive closing moment を生じる visorの設計は可能である。 Flareにたいして十分な考慮がされていなかった。  Flag変更前まではMacが検査と保守をやっていたが、変更後は関知していない。

結語
 Mark Dickinson (ITF) : JAICは 'member of the club' でないscapegoatを見つけるというよくあるRuleを固守している。Members of JAIC は誤解されていると言っているが、質問に直接の回答をしていない。 必要なことは完全な透明性を持って新しく調査を開始することである。 そして信頼される事故の原因を解明することである

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